【書評】うつ病の脳科学


以下、アマゾンに投稿したレビューです。

5つ星のうち 5.0 精神科の今昔と脳科学の未来, 2010/2/1
By 安井 真守 (群馬県高崎市) - レビューをすべて見る
私自身が鬱病を患い、また母親が統合失調症だった立場から言わせてもらうと、心の病を「脳の疾患」と認め、国家レベルでの対策を提起する著者のような専門家が、なぜもっと早く出てこなかったのかと不思議に思う。

その理由について、著者自身が過去の臨床経験を挙げて切実に語る。
「亜型分類の難しさ」(79ページ)
「治療の迷走」(96ページ)
「難しいうつ病診療」(103ページ)

腫瘍やパーキンソン病のように、発症部分がレントゲンやMRIにハッキリと映るワケでもなく、また内科疾患のように、血液を調べれば成分の異常がハッキリと数値化されるワケでもない。
この21世紀になった今でも、心の病の診断は「患者自身の話」から類推していくしかないのだという。

ニワトリが先か、卵が先か。
遺伝子が原因か、ストレスが原因か。
先天的な遺伝子を問題にした研究と、後天的なストレスを問題にした研究、その双方の論文が世界中から報告されてはいるものの、未だどちらと言い切れるレベルのものではないという。

著者は、そのジレンマに終止符を打つべく、患者の死後脳を直接調べさせて欲しいと訴える。
「うつ病研究の壁」(233ページ)
「問題の所在-研究者が調べるべき脳がない」(235ページ)
「精神疾患のブレインバンクの提案」(236ページ)

私達は今まで、自分の病気が治らなければ、それを医師の技量や製薬会社の所為にするばかりで、「患者自身が医学の未来の為に貢献できる事」という観点では、あまり考えてこなかったように思う。
既に脳死が「人の死」として認められ、その臓器が他の人の為に活かされるようになった(なってきた)御時世である。
ならば、脳疾患の患者の死後、その脳が調べられる事によって医学の未来が切り拓けるのであれば、脳はもはや「触れてはいけない聖域」などではなく、「医学完成の為の最後のピース」に成り得るのではないだろうか。

著者を筆頭とした最先端研究者を応援すると共に、一個人として脳科学の未来にどのように貢献できるのか、これからも考えていきたい。
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