【書評】苫米地式コーチング



以下、Amazonに投稿したレビューです。

5つ星のうち 5.0 コーチングとは、そもそも何の為??誰の為??2011/12/18
投稿者 安井 真守 (群馬県高崎市) - レビューをすべて見る

私が本書を手にした時点で、既に本書内で言及されている米国コーチングの元祖、ルー・タイス(Lou Tice)氏と著者が共同で開発したコーチングプログラムであるTPIEの普及が日本でも開始され、その導入部である「まずは親を超えなさい」(フォレスト出版)が出版されているので、「本書の内容は少し古くなっているのではないか?」そんな先入観を持ったまま読み始めた。

しかし、読み終えた後の感想は、そんな先入観を良い意味で大きく覆すものだった。

本書の目的は、20世紀後半に日本の大企業でも導入されて盛んに持て囃された、いわゆる「ビジネスコーチング」と、受講者(クライアント)が持っている可能性を引き出すという「本来のコーチング」を明確に分ける事にある。

特に、従来のビジネスコーチングでは、「教える側」の権威は絶対であり、当然、その資格を持つ者は「過去に実績を上げた者」である事が当然必須の条件とされていたが、本書では「そこからすでに違う」とバッサリと切り捨てる。

「コーチングはどんな人がするといいのか」(134ページ)
「すごい人がコーチに適正とは限らない」(154ページ)
「教えるだけでは逆効果が出る」(157ページ)

著者自身の専門分野である機能脳科学(Functionalism)で解明された「スコトーマの原理」によって、「過去に成功を収めた者ほど、新しい局面が見えなくなってくる」という知見は、既に何度も他の著作の中で述べられてきた事であるが、当然、それは物事を教える、教えられるといった社会的な関係性の中にも当て嵌まる事であり、単に「過去の成功例」を紙に書かれたマニュアルの延長線として教えているだけでは、逆に「成功」という言葉の意味そのものが狭く窮屈になってしまう事を、著者は大きく危惧している。

「方向性の間違ったコーチングによって、かえって悩ませたり、迷わせたり、目標を見失わさせたりしてしまうことも数多くあります」(195ページ)

つまるところ、「本書そのもの」が、私達読者のスコトーマを外す為のコーチングになっているという事に気づいた次第である。
本書は、今読んでも色褪せていない一級の良書であると、強く推薦する。

書評


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