【書評】電通 洗脳広告代理店


以下、Amazonに投稿したレビューです。

5つ星のうち 4.0 グレーゾーン2012/2/27
投稿者 安井 真守 (群馬県高崎市) - レビューをすべて見る

できれば、既刊「テレビは見てはいけない」(PHP新書)を先に読んでから本書を読むと、更に理解が深まるでしょう。

本書中でも参考文献として紹介されているように、電通批判自体は、それこそ私が産まれた頃から議論されているにも拘らず、その影響力は増しこそすれ衰える気配がありません。

私自身はテレビを観なくなって久しいものの、知人や会社の同僚が相も変わらずテレビ番組の事を毎日話しているのを耳にすると、つくづく、日本の「世論」というものは国民が自分達で形成しているのではなく、「企業が考えて、電通が流布するもの」だという事が感じられてしまい、溜息が出るばかりです。

本書中で推測されているような「CIAの黒い影」(108ページ)といった国家レベルの巨大な陰謀論は、たとえ一般の人々でも「考え過ぎだ」と一笑に付す事ができるかもしれません。

しかし、例えば「CIA」を「マクドナルド」や「コカ・コーラ」に置き換えた時に、果たして笑っていられる人がどれほど居るのか・・・
Twitterのタイムラインを眺めていると、それこそマクドナルド社から頼まれた訳でもあるまいに、自ら「マックなう」などと「宣伝」している人の何と多い事か・・・

本書の詳しい内容は、他の方のレビューに譲るとして、私は今一度、著者が本書を著した事の意味を考えたいと思います。
即ち、過去にオウム真理教というテロ組織と戦い、元信者の脱洗脳を手掛けた著者が、今、このタイミングで電通という「一企業」を批判する事の意味をです。

その答えは、「電通という会社が、ある意味、オウム真理教より手強い相手だから」ではないでしょうか。
なぜならば、オウム真理教は殺人という「明らかな刑法違反」を犯したので、それが誰の目にも「悪の組織」であるという事が判別できたし、警察も実行犯を直接逮捕する事ができました。

しかし、電通は本書中で指摘されているように、独占禁止法違反(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)を犯している可能性が高いにも拘わらず、殺人や大規模な人身事故、公害や薬害などを引き起こした訳ではないので、今日の今日まで「グレーゾーン」として放置されてきました。

果たして、私達一般市民への「影響力」という点で考えた時、一宗教組織と、テレビや新聞といった複数のメディアを配下に置く親玉とでは、どちらが「より強力で日常的」なのか・・・

本書を読んだ後に、それでも「娯楽」としてテレビを観続けるのであれば、それは個々人の自己責任に基づく自由でしょう。
しかし、もしも「このままではいけない」と思うのであれば、私達一般市民も、今こそ「一方的に情報を受け取る側」から脱却して、一人一人がインターネット等を利用して「情報を発信する側」に回る必要があるのではないでしょうか。

「いずれにしても、私たち一般市民が『メディアを権力に渡さない』という意志をしっかりと示して、行動していくほかはない」(191ページ)

【追記】2016/10/08

四年も前に書かれたこの本に関する書評が、今頃になってアクセス急増しているで、「一体、何があったのか??」と思って調べてみたら…
なんと、電通の女性社員が過労が原因で自殺したというニュースに行き当たった。
「電通の女性社員を労災認定=入社9カ月、過労で自殺」
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016100700720&g=soc

もちろん、この本自体は「企業」としての電通が国民に対して与えている影響について書かれているのであり、乱暴ではあるが図式としては「支配者としての電通と奴隷としての国民」という捉え方で差し支えないとは思うが、しかし、実際には電通という組織の中に於いても、末端の社員は馬車馬の如く働かされている事実が浮き彫りとなった恐るべき事件である。
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