【書評】選択の科学


以下、Amazonに投稿したレビューです。

5つ星のうち 5.0 事実、事実、事実・・・真に科学的な重き一冊2012/12/23
投稿者 
本書の中には「例え話」の類は殆ど登場しない。
第一線の研究者らしく、ひたすら事実、事実、事実である。
本書のテーマである「選択」について述べる為に、何と著者自身の両親が結婚した際の状況も事例として挙げる徹底ぶりである。

本書の主眼は、著者を一躍有名にした「ジャム実験」について詳細に解説された第6講「豊富な選択肢は必ずしも利益にならい」(217ページ)に集約される。
人は当然の権利として、その時点で自分に提示された選択肢の中から最も合理的な選択をしようとする。
ところが、実際問題としては、あまりにも選択肢が多過ぎると、個々の選択がどのような結果をもたらすのかをシミュレートする事に頭が追い付かず、疲れを感じてしまうという事である。

結論として、
「人は比較的少ない数(四から六)の選択肢を与えられた場合、多く(二〇から三〇)の選択肢を与えられた場合よりも、実際にどれかを選び取る可能性が高く、自分の判断に確信を持ち、選んだものへの満足度が高いことが、一貫して証明されている」(234ページ)
と結んでいる。

また、本書のもう一つの特色として、訳者のスキルの高さが挙げられる。
一般的に、訳本というものは原著の表現を尊重するあまり、日本人にとっては馴染みの薄い「なんか、しっくりこない」表現になってしまい、反って理解の妨げになってしまう場合が多い。
ところが、本書では「四六時中」「十中八九」「オタク系」「宣伝マン」といった、日本人に馴染み深い表現をむしろ積極的に使う事により、読者を引き込む事に成功している。
その巧みさは、うっかりすると本書が訳本である事を忘れてしまう程だ。

最後に、本書の中で私が最も感銘を受けた文言を二つ紹介したい。
「高みから俯瞰することで、内に抱える多くのものの折り合いをつけることができるのだ」(127ページ)
「大切なのは、昔からずっと同じ自分でなくても、自分であることには変わりないという認識を持つことだ」(128ページ)
【広告】

0 件のコメント :

コメントを投稿