【連載】うつ病予防マニュアル 第二回

物理脳と情報脳


 さて、ここまで、医師でもない私が偉そうに高説を垂れるのを読んで、少し辟易された方もいらっしゃると思う。
 もちろん、医師ではない私が鬱病患者の脳を顕微鏡で直接調べる機会などというものは生涯あり得ないと思うので、物理脳、つまり「脳みそ」についての研究は引き続き専門家にお任せするとして、いよいよここからが私の土俵である情報脳、つまり「心についての考察」の出番である。

 「心についての考察」とは、つまりは心理学という事であるが、これならば医師法に違反する事無く、堂々と意見を述べられるという訳だ。
 もっとも、こう言うと、「心理学の分野にだって専門家は居るんだし、どっちにしろアンタは専門家じゃないんでしょ??」という声が聞こえてきそうではあるが…

 例えば家庭内で子供の躾の際に用いる「アメとムチ」だって心理学だし、会社内の上下関係、近所付き合い、はたまた「ナンパ術」の類に至るまで、「人間社会の中で、人の言動が人の心に与える影響を考察する事」は、これら全て広義の意味での心理学であり、つまるところ、私や貴方が「心」について云々語る事は、何一つ法律にも道義にも反しないのだ。

 もしも、「心」について語るにも専門の資格が要る、というのであれば、犯罪者の心理を巧みに描いた推理小説も、切ない恋心を歌った音楽も存在を許されないし、ましてや、獣医師でもない夏目 漱石氏が「吾輩は猫である」などと猫の心理を語るのは、滑稽以外の何物でもないだろう。

 どうか、心を柔軟に保って以後を読み進めて頂きたい。
 私は貴方を挑発したいのではない。
 貴方に、うつ病になって欲しくないだけなのだ。

ウツが起こるメカニズム

ウツ

 さて、先ほどは物理脳、つまり「臓器としての脳みそ」の中で鬱病が発症する詳しい原因は、依然として解明されていないという事を述べたので、今度は情報脳、つまり「心」にウツが発生するメカニズムについて考察していきたいと思う。
 とはいえ、これは物理脳の研究に比べれば、そんなに難しい事ではない。

 なぜならば、脳の中で神経細胞が引っ張られているのか縮んでいるのか、はたまたグチャグチャに絡まっているのかを外科的に観察する事が難しくとも、私達の「心」は、落ち込んでいれば「あぁ、私は今、とても落ち込んでいるな」と自覚する事ができるからだ。
 後は、その「落ち込み」が起こった時の状況を帰納的に集めていけば、自ずと「落ち込みの最悪な状態としてのウツ」が発生する条件を特定する事ができる。

 いや、もっとハッキリ言うと、私達は「なぜ、私は今、ウツな気分に陥っているのか?」という事については、とっくに判っているのである。
 ただ、社会的な地位や個人的な性格に由来する「弱い立場」であるが故に、その「原因」に対して直接的、根本的な対処ができないでいる場合が殆どなのだ。

 以下、典型的なケースとして、私が鬱病を発症した経緯について書いた、このブログの記事から引用する。

http://www.functionalism.science/2009/10/circumstances-that-i-became-depression-1.html

会社の業績が悪化して、社長が自主廃業を決断。
なんとか退職金は出たものの、家族を抱えたまま無職となった僕は、2ヶ月間の職安通いの末、ようやく今の会社に契約社員として入社しました。

http://www.functionalism.science/2009/10/circumstances-that-i-became-depression-2.html

他の派遣社員達がミスを犯しても、『しょうがねぇなぁ・・・』で済むのに・・・僕がミスを犯すと、たとえラインを停止させてでも、ミッチリネットリと『教育タイム』の始まり始まり・・・
他の現場社員達もやらないような、ましてや派遣社員達にはやる必要が無いような、本来的には事務方の仕事である書類仕事を、なぜか契約社員である僕にだけ居残りでやらせようとしたのです。
まぁ、係長が居合わせている時はちゃんと残業扱いになっていたみたいですが、係長の目が無い時は残業が付いていたかどうかも判りません。

http://www.functionalism.science/2009/10/circumstances-that-i-became-depression-3.html

ある日、夜勤が明けて帰宅する途中、スクーターのハンドルを握る手がブルブルと震えているのに気付きました。
明らかに寒さとは別の、『胸から伝わっていくような震え』です。
僕が退職を願い出た事は現場主任にも伝わり、アロサウルスみたいな顔して僕に詰め寄りました。
『どうして、先に俺に相談しねぇんだ!?』
普通に考えて、鬱病の引き金となった当の本人に相談などできる筈がありません。
なのに、この現場主任は真顔で僕に言うわけです。

 記事を書く上で仕方のない事ではあるが、当時の出来事を鮮明に思い出して、かなり感情が昂った「ハイ」な状態で書いているのがお分かりいただけると思う。

【連載記事】うつ病予防マニュアル 第二回
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