【連載】うつ病予防マニュアル 第八回

 「テレビ番組の暴力シーンや過激な性描写を習慣的に観続けていると、実際にそれらを経験したのと同様の精神的ダメージを受ける」という見解が、今や心理学の世界では定説となっている。
 無論、その説に異論を差し挟むつもりは無いし、私自身も十代の頃は、それらの番組を無抵抗、無批判に観ていた一人だ。
 だが、結婚して子供を持つ身となった今では「もしも、自分の子供が残酷なイジメに遭ったら…」「もしも、自分の妻が暴漢に襲われたら…」と想像力が働くようになる訳で、「そういう想像力が働かない輩が、実際に残虐な犯罪を犯すようになるのだ」と指摘されれば、確かに「そうですよね」と同意するしかない。

 しかし、私が本項目で指摘したい「テレビの害」とは、実はそういう事ではない。むしろ、テレビの「番組そのもの」ではなく、番組と番組の間に流れるコマーシャルの方に問題があると言いたいのだ。

 例えば、貴方にもこんな経験はないだろうか。フラリと街の中の家電量販店に立ち寄った時に、そこには大画面で迫力あるスポーツ番組を映し出す液晶テレビや、重厚な佇まいを演出するステレオ装置、あるいは「ナントカ機能」が付いた高性能な洗濯機や掃除機、そして今や若者(?)の必須アイテムであるスマートフォン、そういった物がズラリと並んでいる訳である。

 この時、私達は無意識どころか、ハッキリと意識している筈だ。

 それらの最先端の家電製品が並んだ店内と、我が家の風景とを比べて、「あぁ、私はなんて時代遅れな生活をしているのだろう…」と。
 もちろん、店側が意図的に、そうやって私達消費者の劣等感を煽るような陳列や演出をしていると言いたい訳ではない(いや、ひょっとしたら、しているのかもしれないが…)。

 だが、テレビ番組の合間に流れるコマーシャルには、確実にそうした意図が働いている。それはどういう事かと言うと、「店舗」の場合、基本的にはお客が来るのを「待つ」ものであり、平日と週末、あるいは午前と午後に、どんな年齢層、どんな職業層の客が来るかは「後から」集計して調べる事はできるが、例えば「平日の午後三時に主婦の客層を集めたい」とは思っても、事前にセールのチラシを配布したりしない限り、なかなか意図した曜日や時間帯に特定の客層を集客する事は難しい。
 しかし、テレビの場合は簡単にそれが出来てしまう。いや、もちろんテレビ局の側が視聴者を「集める」のではない。私達、視聴者の側が特定の曜日や時間帯に、既にテレビの前に座って「待っている」からだ。

 後は容易に想像できるだろう。例えば平日の午後七時といえば、夫婦と小学生の子供二人という一般的な家族構成の場合、ちょうど食事中か、あるいは食事を終えて子供がアニメ番組にかじり付いている時間帯である。
 そのアニメ番組の間に、ファミリーレストランやファストフードといった外食チェーン店のコマーシャルが流れる訳である。
 すると、子供が大きな声を上げるのだ。

 「お父さん、今度ここに連れてって!!」

 そして、父親は考える。本心では「面倒臭いなぁ・・・」とは思いながらも、「でもまぁ、最近はどこにも連れて行ってやってないからな。食事ぐらいなら、今度の日曜に連れて行ってやるか・・・」と。

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