脳医学と脳機能学の違い


昨今、なぜか「脳科学」という大雑把な括りで語られる事が多いので、本来的に異なる学問分野である「脳医学」と「脳機能学」を混同している人が多く、それが正しい理解と活用の妨げになっているのは、大変残念な事です。

確かに、同じく脳という臓器について研究しているという点に於いては、総称としての脳科学という表現は間違っていないのですが、それを構成する各個の分野としての脳医学と脳機能学は幾分違うものですので、それらについて真摯に勉強したい人は注意が必要です。

脳医学とは、脳の器質的な構造や状態に関する研究の事であり、それには「モノ」としての基本的な分子構造の解析や遺伝子に因る発達の追跡、身体各部の神経から伝わって来た電気信号を生化学的に処理するプロセスの観察、そして病変となり得る因子の特定などが含まれます。

それに対して、脳機能学とは「心という情報処理機構の機能を測定し、それを再現する事」を主たる目的にしており、そもそもは「心の哲学」(philosophy of mind)と呼ばれる学問分野の一学派である「機能主義」(functionalism)に端を発しています。

当然、その当初から「脳機能学」という呼び方をしていたわけではなく、「心」を扱う学問が哲学から心理学へとフィールドを移す中で次第に実験や検証の精度も上がっていき、遂にはロジャー・シャンクダニエル・デネットのように「脳や心の働きはコンピューターによって再現する事ができる」と唱える学者が現れました。

以来、コンピューターに繋がれたfMRI超伝導量子干渉計といった測定機器によって、「心の状態」と脳内の生化学的反応とを結びつける研究が脳機能学の主流となっています。


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